庇を設置する際、最大限の機能を発揮するだけではなく、近隣住民への配慮や道路にはみ出る危険性などを考慮します。
そのため、庇は出幅が何メートルでも良いというわけではなく、道路交通法や建築基準法に則らなければなりません。
庇を設置する際に気を付けるべき要素のなかには、「外壁後退」と言うものが含まれています。
本記事では、建物における外壁後退について、庇との関係性とあわせて解説します。
建物における「外壁後退」とは?
外壁後退とは、隣地境界線や道路境界線から外壁面を後退させることを指すものです。
簡単に説明すると、隣の家の敷地や道路から一定距離離れて建物を建設する必要があるものをまとめたものであると言えます。
下記、外壁後退が設けられている理由です。
安全性の確保
自宅の外壁が隣の家に近すぎると、どちらかの家屋で火災が発生したときに火が移る可能性が高くなります。
また、大雨や台風といった自然災害によって家屋が倒壊する際、それに巻き込まれてしまうリスクが考えられます。
隣の家から一定距離話して家屋を建設することで、これらのリスクを未然に防ぐことができます。
日照の確保
自宅と隣の家が近すぎると、お互いの家屋で影ができてしまうことにより、日照を確保できないことがあります。
日照が確保できていない場合、洗濯物が乾かなかったり室内に日光を取り込めなかったりするため、快適に生活を送ることができません。
そのため、家屋を建設する際は日照を確保できるように、隣家と一定の距離を離して立てる必要があります。
交通事故による被害の低減
もしも道路と外壁の間に何もなかった場合、交通事故などによって自動車が自宅に突っ込んでくるといったリスクが考えられます。
保険の対象になるのか、負担金はどちらがいくら支払うのかといった、事故の後はさまざまな処理が発生します。
自宅や家族の安全性を確保するためにも、外壁後退で設けられている距離を空けて自宅を建設しましょう。
このように、外壁後退が設けられていなかった場合、さまざまなリスクが発生します。
外壁後退の長さは地方自治体によりさまざまですが、一般的には1メートルから1.5メートルほどが設けられています。
外壁後退が定められているのは下記の地域ですが、一部設けられていない地域もあります。
- 一種低層住居専用地域:建物の高さが10メートルに制限されている住宅
- 二種低層住居専用地域:小中学校など、150平方メートルまでのお店など
- 田園住居地域:農業を促進しつつ、近隣の風景と調和した低階層の住宅
家屋を立てる際は、事前に後退距離を調べておく必要があります。
庇は外壁後退に含まれる?
結論として、庇や軒は外壁後退に含まれない地域があります。
庇は雨風を防ぎ、適度な日光を室内に取り入れるほか、一定の防災機能といった副次的な効果を持ちます。
かつての日本では木造建築が主流だったため、木製の庇が多く使われていました。
木材には独特なぬくもりがある一方、火や湿気に弱く、定期的に張り替える必要があります。
特に、火災が発生したときは火が隣家に燃え移る可能性が高いため、災害に対するリスクがあるものです。
そのため、現代の家屋には耐火性が高い庇が設置される傾向にあります。
当社では火に強く、軽量で高い耐久性を持つアルミ製の庇を多く用意しています。
外壁後退とあわせて、耐火性が高い庇を設置することでより安全かつ快適に日常生活を送ることができます。
当社商品ページ:製品案内(出幅別)
(https://www.alfin.co.jp/products/)
壁面線と外壁後退の違い
外壁後退と混同されることが多い言葉のひとつとして、「壁面線」と呼ばれるものがあります。
壁面線は道路の境界線から離す距離を指すものであり、外壁後退は道路だけではなく隣家も対象となる点が違います。
つまり、壁面線は外壁後退に含まれる要素であると言えるでしょう。
いずれも、自宅・隣家ともに安全かつ快適に生活を送ることが目的です。
このように、家屋を建築する際はさまざまな要素を検討しなければならないことがお判りいただけたと思います。
なかには「外壁後退について理解したから、庇はDIYでも大丈夫だろう」と思われる方がいらっしゃることでしょう。
しかし、実際に設置してみると隣家にはみ出してしまう・庇が落下してしまうといったトラブルが発生することがあります。
そのため、庇を後付けする際は施工会社など専門家に相談することをおすすめします。
専門家は最適な庇の長さを、外壁後退や庇本来の性能を最大限発揮できるように計算して提案をしてくれます。
おわりに
本記事では、庇と外壁後退の関係性について解説しました。
外壁後退は建築基準法によって定められている、隣家と道路から一定距離を離して家屋を立てるように指示しているものです。
いずれも、自宅や家族の安全だけではなく、近隣住民とのトラブルを避けるために守らなければならないものだと言えます。
安全性や快適性を向上させるため、外壁後退を守って自宅を建設しましょう。